効果的なBtoBの海外プロモーション
プロモーションのジレンマ
国内市場では高いマーケットシェアを誇りますが、海外では状況が一変。地場企業とグローバル企業が強いブランドと流通チャネルの支配を通じて、盤石な体制で向かい打ちます。海外市場での足場は完成度の高い製品と経験豊富な現地営業チームのおかげで比較的短期間に築くことができました。初期顧客を何件か確保したところ、もっと積極的に宣伝活動を行いたいのですが、どのような販売促進が効果的か自信を持てません。
最初の参入障壁
この時点で海外市場における事実上最初の参入障壁に到達しています。初期顧客を確保すること自体は大きな問題ではなく、営業活動だけで売り上げを伸ばそうとすると顧客獲得コスト(CAC)の高止まりという深刻な問題に直面します。競争相手と同じことをやっても本社幹部が求める時間軸で顧客獲得コストを下げる促進効果は十分醸し出せません。
ライバル企業よりはるかに少ない販促費用でどうすればこの最初の参入障壁を超え、市場での明確な位置付けが確立できるでしょうか。その答えは販促活動の効用を高めるところにあります。
ユーザーのワークフローにおける発見
競争相手と同じような販促企画を敬遠しながら、費用対効果が高いプロモーション選択肢を見付ける方法の一つはユーザーが貴社製品を活用する場面で生じる諸作業を観察することです。特に、短い期間中のユーザー行為二つに注目すべきです。
- 一つ目は、ユーザーが直前の無関連の動きから貴社製品を活用するための動きに切り替える時(準備作業)
- 二つ目は、ユーザーが貴社製品を活用する上で必要となる主な作業を終え、次の製品に注意を移そうとしている時(仕上げ作業)
Bはそちらの製品。「準備」と「仕上げ」の作業に発見を求める。
例えば、もし対象品がモーターもしくはセンサーのような製品である場合、それを自分の設計図に取り込む設計エンジニアの直前の動きを観察すべきです。エンジニアはカタログで当製品の性能を確認するか、また必要な 3 次元 CAD データをどのように入手するかです。さらに組み立て工程を行う技術者や出荷前の試験を担う品質保証部の動きにも注目すれば設計エンジニア以外のユーザーが貴社製品と関わる際の行動も見えてきます。
貴社製品と関わるユーザーを特定し、当製品が各ユーザーに及ぼす影響を理解する。
ユーザーの準備と仕上げの作業に注目すれば、世界統一のハードウェア仕様に影響せず、海外市場毎に変えられる製品仕様のソフトな部分に発見(改善の機会)を求めるようになります。
ユーザー本位思考の販促戦略
ユーザーが貴社製品と関わる際の行動を観察すれば、同製品が使われる場面、また顧客のワークフローにもたらすベネフィットを把握できるようになります。これはユーザーのソフトな部分に含まれた付加価値に関する潜在的な要求を会議室など人工的な環境の中で実施する通常の「質疑応答」形式調査と対照的です。
貴社製品を実施する際の準備と仕上げの作業に注目すれば次の効果が得られます。
- 満たされていないユーザーの要求と貴社製品のプロモーション活動における差別化の機会を見付ける
- クリエイティブ概念を考案する際の領域を設定することにより、プロモーション戦略の品質を高める(プロモーション戦略は営業、エンジニアリング、経営など、主要社内ステーキホルダが理解できるユーザー本位の思考に固定される)
- 観察形式の調査は質疑応答形式と比較して調査に協力する顧客への負担が軽くなる(質問はユーザー行動を事後確認する程度で済む)
「発見」の数を最大化
ユーザーの準備と仕上げの作業に注目する理由はユーザーのプロセスそのものを文書化するためではなく、観察側の理解とユーザーの経験との間に生じる相違点を特定するためなのです。部門間のチームを介してこの相違点を検証すれば独創的なプロモーションの考案に結び付く可能性があります。
以下のことを取り入れれば、「発見」との巡り合いが増えるはずです。
- ユーザーを訪問する前に、主要社内ステーキホルダと一緒に仮説を立てる。これで現場確認すべき点が特定できる
- 役割と経験レベルが異なるユーザーを観察する。例えば、若いエンジニアは習慣となった業務内容を疑問視する傾向があるため、「発見」の宝庫になるかもしれない
- 表情の微妙な変化に気付き、理解しない行動について問い掛け、またユーザーによる発言に対して探りを入れる。これらの表現にはユーザーの疑念や不満が隠されているかもしれない
- ユーザー行動をビデオ、もしくは写真記録に撮って製品エンジニアと一緒に鑑賞し、彼らの関心を引く場面を特定する
- 現場で付けた観察日記は24時間以内に主要社内ステーキホルダと一緒に見直し、記憶が未だ新鮮な内にできるだけ情報を書き加える
観察記録の社内レビューは24時間以内に完成すべき。
まとめ
貴社製品を応用しているユーザーの観察とそこから導かれる発見により、社内ステーキホルダが受け入れられる、且つユーザーの心に響くプロモーション戦略とクリエイティブ案の要素が作り上げられます。
顧客のベネフィットにしっかりと固定されたプロモーション戦略があれば一連の販促活動の関連性と効用が高まり、戦術優先の販促手法を使ってしまう罠に陥らずに済むことでしょう。