世界中に分散されているマーケティングチームを表現する画像

(著)G. インウッド2016年8月8日

(著)G. インウッド2016年8月8日

海外に点在するBtoBマーケティング部隊を動機付ける

物理学で力の作用に対して反作用があると同じように、マーケティングでも全ての施策(作用)に対して影響(反作用)がありますが、しばしばその影響は芳しくもなく、意図もしないものです。正にマーケティングの副作用と表現してもいいでしょう。例えば、広告や販売促進を使って短期的な業績回復を図る際、副作用が出ます。また、展示会の予算を削減したり、新規顧客の獲得を優先したりした際もいわゆる副作用が表れます。

マーケティングの副作用の殆どは、営業やエンジニアリングなどの顧客と直接会う部署に表れます。マーケティング部内で顕在となる主な副作用といえば、チームメンバー各自の業務に対する意欲(モチベーション)への影響があります。つまり、マーケティング組織を管理する側の意思決定や行動がモチベーションに及ぼす影響です。この記事では、グローバルマーケティングの責任者の行動や意思決定が、海外で遠く離れたBtoBマーケティングチームで招き得る悪しき事態を紹介したうえ、対応策も提案します。

モチベーションとマーケティング効果の関係

マーケティングは、販売促進とブランド構築のように短期的に効果を出す施策もあれば時間を掛けて効果が表れるものもあります。もちろん現地の実行部隊の意欲次第、マーケティングの成果が大きく変わる可能性があります。一般的に、やる気が低ければ、現地の担当者はより多くの間違いや判断ミスを犯し、受け身的になってタイムリーに対応ができず、本来の顧客本位の姿勢を失い、経験から学ぶことが少なくなります。

図1:マーケティング部署のパフォーマンスを下支えするモチベーション
マーケティングチームに対するモチベーション効果

モチベーションはどの業界でも重要な要素ですが、多くの組織では体系的または科学的に管理されていません。モチベーション管理は、多くの場合、中間管理職の責任と見なされますが、BtoCマーケティングやBtoB営業とエンジニアリングの部門と比較して、人材と予算に乏しいBtoBマーケティングの組織では、中間管理職が打てそうな対策または裁量の範囲が限られてくるため、問題の性質を事前に把握して対策を練る必要があります。

対照的にBtoB営業およびエンジニアリング部門は、次の要素を使って部署のモチベーション水準を管理することができます。

  • 同僚に認められること(一般的なBtoB組織で営業およびエンジニアリング部門は、同マーケティング部門の何倍も大きいため、同僚に認められることは強力なインセンティブとなり得る)
  • 金銭的なインセンティブ (BtoBの営業部門の貢献度は直接売上高から判断しやすいため、報酬の連動も簡単ですが、多くの場合マーケティングの貢献が正しく把握されていない)
  • キャリア形成(営業とエンジニアリングの部門は、その規模が大きい故に、所属する部員にもっと豊富なキャリア上の選択肢を用意できる)

BtoBマーケティング部門のモチベーションを高める問題は、上級管理職が海外に在り、社内文化が統一されていない多国籍企業ではさらに複雑です。

マーケティング施策を展開する前に点検する

上級マーケティング管理者は、グローバル展開をする前に施策内容を点検し各国のマーケティングチームのモチベーションに対する影響を考慮した上で、実行の有無やタイミングの決定に反映させる必要があります。具体的には、次のような項目を確認対象にすべきです。

  • 以前、実行した施策が未だ完了されていないのに、営業とエンジニアリング資源をまた多く利用しそうな新しい試みが実行できるという社内空気はありますか。それとも、現地のマーケティング担当者を不満が募る営業やエンジニアリング部門の矢面に立たされることになるのでしょうか。
  • マーケティング案の評価基準には、現地のマーケティング担当者に対する実施または運用上の負担を考慮しますか。それとも、最も望ましい結果またはマーケティングROIを最大化しそうな提案を採用しますか。
  • 現地のマーケティング担当者に大きな負担が掛かりそうな提案を採用した場合、短期間に作業量が増やせる外部の業者に応援を求めやすい状況に置かれていますか。それとも、自立至上主義の社内文化が地元のマーケティング担当者に助け船を躊躇させるのでしょうか。
図2:外部の業者が人材と技能を補える
外部の業者が人材と技能を補える。

モチベーション管理の基準を設ける

特に組織が世界中に分散されている場合には重要ですが、マーケティングのグローバル責任者は、モチベーションを管理するための基準を設ける必要があります。これは、上級マーケティング管理職が組織全体のモチベーションを管理し、各国のマーケティング担当者がモチベーションを高めそうな提案作りに参加する双方向プロセスであるべきです。モチベーション管理は、マーケティング担当者と上級管理者の人事評価に項目として含めるのが理想的です。

図3:モチベーション管理に必要不可欠な要素
モチベーション管理に必要不可欠な要素

キャリア形成の機会不平等に対処する

キャリア形成は、各国の現地マーケティング担当者を動機づけるために使用できるもう一つの要素です。通常、本社に近い程、マーケティング担当者のキャリア形成の機会は多くなります。また、本社から遠く離れたマーケティング担当は内部進歩や社内表彰の機会が少なくなるでしょう。現地のマーケティング組織内でキャリア形成や昇進の機会がない場合は、現地の従業員を一定期間海外の拠点に異動させてグローバルな視野や国際経験、豊富な人脈を持たせてはいかがでしょうか。これにより、部門を超えたグローバルなチームに参加できるようになり、国際的な規模で同僚に認められる機会を与えることになります。

ラーニングカーブを緩くする

マーケティング目標の短期的または長期的な偏重にもかかわらず、に重み付けされているかどうかに関わらず、マーケティング自体は、長期的な取り組みです。本国だけでなく海外の現地法人でも、時間と資源を掛けてマーケティング部門の役割を明確にしたり、人員を成長させたりするといった絶え間ない努力が必要となります。

近年、マーケティングの技術進歩に伴い、新しいマーケティングプラットフォームやソフトウェアの導入の動きが活発になっています。しかし、実際の作業に使えるまでプラットフォームやソフトウェアをマスターするのは困難であり、学習期間が十分でなければ関連のマーケティング施策の妨げになり、マーケティング担当者自身がやる気を削ぐような挫折感と戦うことになり兼ねません。従って、上級マーケティング管理者は、新しいマーケティングツールやソフトウェアを導入する際に、控えめの日程を設定し各国のマーケティング担当者の習得度が横並びしてから関連計画の実行に移すべきでしょう。

現状把握と透明な意思決定

モチベーションを下げるような要素を減らすためにはまずその存在向き合う必要があります。これにオンライン調査を使えば、個人的なやり取りから生じる偏見を除外しつつ、現状把握が可能です。次に、マーケティングのグローバル的な施策を検討するプロセスを、本社に在る少人数の手中から離して幅広い意見を取り入れる意思決定プロセスを新たに確立すべきです。

まとめ

マーケティング施策が現地の組織に与えるすべての影響(マイナス効果、プラス効果ともに)を理解した上で、これをグローバルなマーケティング計画に織り込むことが重要です。計画に無理が生じる場合、人材や資金が不足がちな海外の組織に最初に表れる可能性が高いため、継続的なモニタリングの重要性を侮ってはいけません。