日本とドイツの金属切削型工作機械の輸出動向
インタラクティブな方法で業界研究
工作機械業界は、自動車、一般機械、航空機、エレクトロニクスの各分野における技術革新、生産性向上、経済成長に大きく貢献しています。この記事では、貿易統計の時系列データを使用して、6種類の金属切削型工作機械の主要輸出国を特定し、同市場を支配する日本とドイツの競争関係についても検証します。その過程で次のインタラクティブなチャートを作成しました。
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- Chart 1
- [折れ線グラフ]
金属切削型工作機械の生産 - Chart 2
- [棒グラフ]
主要生産国の機種別輸出入 - Chart 3
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日本とドイツの機種別輸入 - Finding
- この調査の主な結果
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【この記事について】
工作機械業界の2010年から2020年までの動向についてご興味があれば図1と図2をご覧ください。また、ドイツと日本の工作機械業界に関心のある方は、図3と末尾の調査結果をご確認ください。
この記事の対象は、工作機械業界向けの装置やユニット製造に関わっているマーケティング担当の方がメインとなりますが、その他の方でも業界の現状把握に役立っていただければ幸いです。
金属切削型工作機械の種類
金属切削型工作機械は、世界の工作機械生産の約75%を占めます。工作機械は切断や研削によって加工物から余分な材料を除去するために使用します。代表的なものとしてマシニングセンタ、旋盤、ボール盤、研削盤、歯車切削盤などがあります。レーザー加工機、イオンビーム機、超音波加工機、放電加工機(EDM)、積層造形用3Dプリンタなどの特殊機械も通常、金属切削加工の工作機械に分類されます。
半面、世界の工作機械生産の残り25%は、第二次金属加工機械が占めます。この種類の代表的な機械として、機械プレス、油圧プレス、せん断機、ベンディングマシンがあります。これらはスタンプやロール、曲げ加工などにより材料を完成した形状に成形します。
調査方法と範囲
表1に調査の対象となる6種類の金属切削型工作機械のHSコード[1]を列挙します。調査の対象期間は2010年から2020年までの11年間です。比較のために、米ドルの平均年間レートが適用されます。対象国は、中国(CHN)、日本(JPN)、ドイツ(DEU)、韓国(KOR)、イタリア(ITA)、米国(USA)、台湾(TWN)、スイス(CHE)、オーストリア(AUT)、スペイン(ESP)、インド(IND)[2]で、2020年時点で上位11ヶ国の工作機械生産国になっています。
HSコード | 説明 |
---|---|
8456 | 特殊機械(EDM、レーザー加工機、3Dプリンターなど) |
8457 | マシニングセンタ、トランスファーマシンなど |
8458 | 旋盤(ターニングセンタを含む) |
8459 | ボール盤、中ぐり盤、フライス盤など |
8460 | 研削盤、ホーニング盤、バリ取り機など |
8461 | 歯切り盤、歯車仕上げ機械など |
HSコード | 説明 |
---|---|
8456 | 特殊機械(EDM、レーザー加工機、3Dプリンターなど) |
8457 | マシニングセンタ、トランスファーマシンなど |
8458 | 旋盤(ターニングセンタを含む) |
8459 | ボール盤、中ぐり盤、フライス盤など |
8460 | 研削盤、ホーニング盤、バリ取り機など |
8461 | 歯切り盤、歯車仕上げ機械など |
HSコード | 説明 |
---|---|
8456 | 特殊機械(EDM、レーザー加工機、3Dプリンターなど) |
8457 | マシニングセンタ、トランスファーマシンなど |
8458 | 旋盤(ターニングセンタを含む) |
8459 | ボール盤、中ぐり盤、フライス盤など |
8460 | 研削盤、ホーニング盤、バリ取り機など |
8461 | 歯切り盤、歯車仕上げ機械など |
元データは、ドイツ工作機械工業会(VDW)の年次市場レポート「Market Report」で発表した工作機械生産統計です。この元データに、金属切削加工系が全体に占める比率を適用して本調査の金属切削型工作機械の生産データを生成しています。尚、適用する比率は政府の生産調査、受注情報、貿易統計など入手可能な最も関連性の高い統計から算出しています。
金属切削型工作機械の生産動向
金属切削型工作機械の利用者は世界中に散らばっていますが、生産は中国、日本、ドイツの3ヶ国に集中しています。この3ヶ国が世界生産の約61%を占めます。更に、韓国、イタリア、米国、台湾、スイスの5ヶ国からなる第2のグループが約29%を占め、オーストリア、スペイン、インドの第3のグループが約4%を占めるため、上位11ヶ国が金属切削型工作機械の生産の約94%を占めることになります。図1はこれら3グループの生産量をグラフ化したものです。実際のデータは表2を参照してください。
~の国~
中国は金属切削型工作機械の最大生産国で、生産が二分化しています。通常の地場企業は国内で多く消費される低性能の設備を生産し、外資系企業と有力中国企業は外資系企業の現地工場が使う高性能設備を生産しています。しかし、中国の工作機械需要の伸びは鈍化しており、外資系メーカーは賃金のより低いASEAN諸国に生産設備を移し始めています。
日本とドイツの生産レベルはほぼ同じで、両国は工作機械生産の大部分を輸出しています。例えば、2020年にドイツは生産の71.5%を輸出し、日本は61.9%を輸出しました。ちなみに同年、ドイツは生産の21.7%に相当する金属切削加工の工作機械を輸入し、日本はわずか6.5%しか輸入していません。
工作機械業界は、経済見通しの変化や通貨の動き、地政学的な対立などにより、需要が内外急激に変動することがあります。しかし、技術習得の困難や長年の顧客関係などの参入障壁により、市場シェアに変化が生じることはめったにありません。例外はインドで、まだ規模は小さいものの、自動車産業とエレクトロニクス産業の発展により、第2のグループに進む可能性を秘めています。
金属切削型工作機械の輸出動向
図2は日本とドイツの金属切削型工作機械の輸出における優勢を物語っています。ドイツは金属切削型工作機械の最大輸出国であり、全6種類の機械の輸出において1位もしくは2位を占めているのに対し、日本は2種類の機械の輸出で大佐をつけての1位です。
~マシニングセンタ[年]~
図2の結果に基づいて金属切削型工作機械の輸出について次の動向が認められます。
金属切削型工作機械の輸出動向
マシニングセンタ(8457)
- 日本はマシニングセンタの最大輸出国である。その輸出台数は輸入台数の20倍にもなる。
- マシニングセンタの市場は巨大であり、ドイツと日本は全輸出の約60%を占める。しかし、ドイツは2016年以降、日本の支配的地位を脅かし始めている。
- 日本のマシニングセンタ輸出は、中国のマシニングセンタ輸入と密接な相関関係にある。
旋盤(8458)
- 日本は旋盤の最大輸出国である。その輸出台数は輸入台数の10倍にもなる。
- 合わせて日本とドイツが旋盤の世界輸出の約半分を占める。
ボール盤(8459)
- ドイツはボール盤の世界輸出の4分の1以上を占める。
- 2013年以降、日本のボール盤輸出は大きく落ち込んでおり、2位から6位に下がった。ボール盤の世界輸出は同期間に減少したが、その減少幅は桁違いに小さかった。
研削盤(8460)
- 合わせて日本とドイツが研削盤の世界輸出の約半分を占める。
- ドイツは2013年以来、2位の日本に対して優位性を維持している。
- スイスは研削盤の貿易黒字が比較的大きい。3番目に大きい輸出業者でありながら、その輸出台数は輸入台数の8倍になる。
歯切り盤(8461)
- ドイツは歯切り盤の輸出について支配的な立場にあり、その輸出台数は輸入台数の6倍になる。日本の輸出量はドイツの半分以下で、中国に負けて3位に後退している。
特殊機械(8456)
- 中国は特殊機械の最大輸出国であり、2010年以来400%の成長を遂げている。
- 特殊機械が多岐にわたり、まだどの国も支配的な立場を得ていない。輸出市場が当分成長を続ける見通しである。
表3は、日本とドイツの2020年の輸出実績をまとめたものです。
種類 | HSコード | 輸出総額 | DEU→世界 | JPN→世界 |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $63.38億 | 27.5% | 31.6% |
旋盤 | 8458 | $41.45億 | 19.1% | 28.0% |
ボール盤 | 8459 | $19.57億 | 26.2% | 6.7% |
研削盤 | 8460 | $28.10億 | 29.0% | 20.5% |
歯切り盤 | 8461 | $16.87億 | 32.0% | 12.2% |
特殊機械 | 8456 | $49.96億 | 19.2% | 17.7% |
種類 | HSコード | 輸出総額 | DEU→世界 | JPN→世界 |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $63.38億 | 27.5% | 31.6% |
旋盤 | 8458 | $41.45億 | 19.1% | 28.0% |
ボール盤 | 8459 | $19.57億 | 26.2% | 6.7% |
研削盤 | 8460 | $28.10億 | 29.0% | 20.5% |
歯切り盤 | 8461 | $16.87億 | 32.0% | 12.2% |
特殊機械 | 8456 | $49.96億 | 19.2% | 17.7% |
種類 | HSコード | 輸出総額 | DEU→世界 | JPN→世界 |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $63.38億 | 27.5% | 31.6% |
旋盤 | 8458 | $41.45億 | 19.1% | 28.0% |
ボール盤 | 8459 | $19.57億 | 26.2% | 6.7% |
研削盤 | 8460 | $28.10億 | 29.0% | 20.5% |
歯切り盤 | 8461 | $16.87億 | 32.0% | 12.2% |
特殊機械 | 8456 | $49.96億 | 19.2% | 17.7% |
日本とドイツ 2 国間の競争
日本とドイツは、高性能工作機械の最大生産国と最大輸出国として世間に認められています。この節では、日本とドイツの競争力を測る上で、互いの国内市場にどの程度浸透したかを見ていきます。図3は、ドイツと日本の全体の輸入と、2国間の輸入を示しています。2国間の実数データが表4にあります。
~マシニングセンタ~
図3の結果に基づいて金属切削型工作機械の日本とドイツ2国間輸入について次の動向が認められます。
日本とドイツ2国間輸入の動向
マシニングセンタ(8457)
- ドイツの輸入マシニングセンタの約20%は日本からで、日本のマシニングセンタ輸入の70%近くはドイツからである。
旋盤(8458)
- ドイツの輸入旋盤の約20%は日本からだが、日本はドイツから旋盤をほとんど輸入しない。
ボール盤(8459)
- ドイツはボール盤の3番目に大きい輸入国だが、日本からの輸入が皆無に近い。2国間のボール盤取引は事実上存在しない。
研削盤(8460)
- ドイツは研削盤の3番目に大きい輸入国だが、日本からの輸入はほとんどない。日本はドイツから輸入するが、少量に留まる。
歯切り盤(8461)
- ドイツは日本から歯切り盤をほとんど輸入しない。日本の輸入の20%近くはドイツからだが、少量に留まる。
特殊機械(8456)
- ドイツの輸入特殊機械の12%は日本からだが、日本の輸入の約3分の1はドイツからのものである。
表5では、2020年時点での日本とドイツの輸入に対する相互依存をまとめました。
種類 | HSコード | 輸入総額 | DEU→JPN | JPN→DEU |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $127.0百万 | 69.1% | 18.3% |
旋盤 | 8458 | $72.4百万 | 1.7% | 19.8% |
ボール盤 | 8459 | $5.4百万 | 28.6% | 0.7% |
研削盤 | 8460 | $17.1百万 | 15.2% | 1.2% |
歯切り盤 | 8461 | $11.8百万 | 16.9% | 2.0% |
特殊機械 | 8456 | $103.1百万 | 31.9% | 12.2% |
種類 | HSコード | 輸入総額 | DEU→JPN | JPN→DEU |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $127.0百万 | 69.1% | 18.3% |
旋盤 | 8458 | $72.4百万 | 1.7% | 19.8% |
ボール盤 | 8459 | $5.4百万 | 28.6% | 0.7% |
研削盤 | 8460 | $17.1百万 | 15.2% | 1.2% |
歯切り盤 | 8461 | $11.8百万 | 16.9% | 2.0% |
特殊機械 | 8456 | $103.1百万 | 31.9% | 12.2% |
種類 | HSコード | 輸入総額 | DEU→JPN | JPN→DEU |
---|---|---|---|---|
マシニングセンタ | 8457 | $127.0百万 | 69.1% | 18.3% |
旋盤 | 8458 | $72.4百万 | 1.7% | 19.8% |
ボール盤 | 8459 | $5.4百万 | 28.6% | 0.7% |
研削盤 | 8460 | $17.1百万 | 15.2% | 1.2% |
歯切り盤 | 8461 | $11.8百万 | 16.9% | 2.0% |
特殊機械 | 8456 | $103.1百万 | 31.9% | 12.2% |
表5に照らして、ドイツと日本の金属切削型工作機械の技術競争力について、以下のように概括できます。
主な調査結果
まとめ
日本とドイツは、工作機械の産業において異なる成長戦略を採用してきました。どちらも輸出本位ですが、日本は伝統的に参入しにくい市場とされており、内需のほとんどは国内生産によって賄われています。対照的にドイツは国内生産の大部分を輸出し、国内需要を満たすには国内生産と輸入品がともに重要な位置付けを占めます。この異なる戦略を実施した結果、日本はマシニングセンタと旋盤の輸出において世界を大きくリードするようになり、ドイツは全ての種類の機械の輸出において上手に立ち回って高成績を収めています。
注記
- HSコードとは世界共通で使われる輸出入する品目のための分類番号です。この調査の対象となるHSコードには予備品と付属品が含まれていません。
- インドは12位の生産国でその潜在的な成長力を見越して11位のフランスの代わりに採用されました。